研究紹介 林研究室

理学部物理学科 林研究室

概要

「世の中の物質をどんどん細かくしていくと何になるのだろう。」
「宇宙はどのようにして始まったのだろうか。」
子どもの頃、このような素朴な問いに思いを馳せたことがあるのではないでしょうか。私の専門分野である超弦理論、素粒子理論は、このような素朴な問いの答えを大真面目に物理として理解することを究極の目標としています。

例えば、身の回りの物質の運動を考えると、それらの多くは高校でも習うニュートン力学を用いて理解することができます。しかしながら、ニュートン力学で全てが理解できるわけではありません。光の速さに近い速さで運動する物体は、ニュートン力学を拡張したアインシュタインの特殊相対性理論によって記述できます。一方で、非常にミクロな粒子の運動を記述する場合は、ニュートン力学の別の拡張である量子力学が必要になります。では、光速で運動するミクロな粒子の運動を理解したい場合にはどうすれば良いのでしょうか。実はその場合は、特殊相対性理論と量子力学を融合した、場の量子論という理論によって記述できることが分かっています。この場の量子論は、素粒子の運動を記述する基礎理論であり、現代物理学において非常に重要な役割を占めています。

しかし、話はこれで終わりではありません。実は、強い重力は、特殊相対性理論をさらに拡張した一般相対性理論によって記述されるため、この一般相対性理論と量子力学を統一的に扱える枠組みが必要となります。その統一理論の有力候補であるのが、私の専門分野でもある超弦理論です。超弦理論はこれまでの理論と違い、とても変わった性質を持っています。例えば、もし超弦理論が私たちの宇宙を記述しているならば、
・すべての物質はひも状の弦から出来ている。
・宇宙空間は空間三次元、時間一次元の他に六次元空間が存在する。
といったことを示唆しているのです。にわかには信じられませんが、この一風変わった特徴が、一般相対性理論と量子力学を融合する際の困難の解消に役立ち、また他方では超弦理論の大変豊かな数学的構造を生み出しています。実は、超弦理論の研究から数学の新たな分野が生まれたこともあるのです。私は、この超弦理論を用いて、場の量子論、数学、素粒子物理、宇宙物理の新たな側面を理解することを目的とした研究を行っています。

また、超弦理論は世界中で活発に研究されており、私もこれまで様々な国々の研究者と共同研究を行ってきました。基本的には紙と鉛筆だけで、世界中の研究者と議論し、新たな発見ができるところも魅力の一つだと思っています。