研究紹介 八木原研究室 学会研究会受賞

川口翼さん:第54回高分子と水に関する討論会 優秀賞

大学院総合理工学研究科総合理工学専攻物理・数理科学コース博士課程3年生の川口翼さん(指導教員=理学部物理学科・八木原晋教授)が、12月8日に開催された第54回高分子と水に関する討論会(東京)で優秀賞を受賞しました。この賞は高分子学会の高分子と水・分離に関する研究会が同討論会での若手研究者による優秀発表を称えるために、候補者の10-15%の発表に贈られるもので、今回は「液体分子の回転・並進拡散の相補的解析による動的構造の特徴づけ」と題した川口さんの発表が選ばれました。これまで核磁気共鳴と誘電分光を相補的に用いて複雑系物質や生体の動的構造について研究しており、液体構造から食品、脳機能まで幅広い研究活動を目指しています。
川口さんは、「本研究では、全く異なる測定手法を用いて数多くの常温で液体状態をとる分子を測定することで、分子の回転・並進運動について分子種によらない統一的な解釈を行うことを目指しています。極めて基礎的なテーマではありますが、測定上では様々な困難がありこれまで調べられていませんでした。今回、いままで私たちが行ってきた様々な測定手法の改善や工夫を評価していただき、受賞できたことを大変うれしく思います。」と話しています。

庄司幸平さん:第26回日本MRS年次大会 奨励賞

大学院理学研究科物理学専攻修士課程1年生の庄司幸平さん(指導教員=理学部物理学科・八木原晋教授)が、12月20日に開催された第26回日本MRS年次大会(横浜)で奨励賞を受賞しました。この賞は例年開かれる年次大会で優秀な発表をした若手研究者を称 えるために、候補者の10%程度の発表者に贈られます。庄司さんは、広帯域誘電分光法によってW/Oエマルションの構造形成について調べており、食品や生体などの複雑系の構造形成過程への応用まで研究しています。今回は「食用油の分子挙動と水との凝集構造形成への誘電分光法からの考察」と題した発表が選ばれました。
庄司さんは、「私の研究対象であるW/Oエマルションは、水が油中に分散した熱力学的に不安定なものです。エマルションの研究の多くは安定性を高めることに着目していましたが、私の研究では不安定さを逆手にとり、エマルションの構造形成の過程に界面のイオン挙動から迫った点が独特で、今回の受賞に繋がったのではないかと思います。今後もこれを励みにさらに研究を進め、将来的には食品や生体といった分野への応用の足がかりとしたいと考えています。」と話しています。