RGMS

Research Group of Molecular complex System

研究概要

複雑液体の動的構造

複雑液体とは水素結合によって液体構造をもつ水やアルコール類などの会合性液体とそれらの混合液,単純な化学構造だが異方的な立体構造をもつため高次の配列秩序を示す液晶,分子内部回転の自由度による多彩なコンフォメーションを反映した高次構造を示す高分子やその溶液などの総称である。

会合性液体の構造は古くからある困難な問題である。液体の示す速い分子ダイナミクスの観測が極めて困難であったため,1世紀近くも解決できずにいた問題である。最近の申請者らの研究ではマイクロ波誘電分光測定法の一種である時間領域分光(TDR)システムの開発によって,速い分子ダイナミクスの観測が可能になり,多くの会合性液体で形成される分子クラスターの大きさや動的挙動が明らかになりつつある。水やアルコール5,6分子の作る分子クラスターが混合液で崩壊していく様子は,今後に期待される会合の官能基や分子量の大きい液体構造の解明の基本データになるであろう。

液晶はディスプレイなどへの応用が先行し,基礎物性の解明は遅れている。ディスプレイに適用される時には分子ダイナミクスの観測が重要なはずだが,特に最新の技術で利用される長軸まわりの回転は液体なみに速く,従来の測定技術では観測が困難であったためである。申請者らはこの観測に国際的に最も早く成功しており,今後工業的応用にまでつながる基礎研究の分野に寄与できるだろう。

高分子は元々申請者らの専門分野であり,過去20年にわたって,分子鎖ダイナミクスの実験的検証について学会への少なからぬ寄与を示してきた。最近では溶液中の分子鎖の広がりを反映する分子鎖ダイナミクスを見出した。今後はゲル構造を示す束縛された高分子鎖について,ネットワーク構造と分子鎖ダイナミクスの関係を明確にすることが期待される。