RGMS

Research Group of Molecular complex System

研究概要

物質中の水の動的構造

水は生命にとってはもちろん,地球環境においても最も重要な物質であることは広い分野で認められている。水は単独でなく,他の物質と混合して存在していることが多い。このとき,他の物質と水との親和性がその混合物の物性を決定する。申請者らはこの性質を分子レベルの相互作用で理解するための解釈を目指している。

水と導体粉との混合液は異常に大きなマイクロ波吸収を示すことが最近の申請者らの測定から判った。従来単に電気伝導率の変化に伴うオーミックな吸収として解釈されてきたのは,マイクロ波領域での測定技術がなかったためである。この吸収が導入された導体粉と関係あることから,インプラントの発熱機構としての応用的利用法も可能であろう。同様にイオン水溶液の物性に関しても,マイクロ波領域での動的な情報に関する知見はこれまでほとんど得られていない。今後,生体系研究のための基礎データとしてまず完全に理解されるべき系である。

物質中の水の構造で重要なものに結合水がある。結合水は他の分子に水素結合で束縛され,通常の自由水とよばれる水分子よりも分子運動の速度が遅くなっている水分子のことをよぶ。生体系に限らず,粘土などの鉱物の配位水,セメントなどの結晶水,ゲル水など,束縛のされ方にも種類があるが,いずれもそれらの混合系全体の構造や変化に直接関与しているため,これら結合水の動的構造を知ることは極めて重要である。

物質の含水量測定は極めて応用範囲の広い分野である。医学の分野における浮腫,ガン細胞の検出,皮膚の含水量測定による保湿効果の検証,建築・土木の分野におけるセメントの硬化と劣化の反応メカニズムの解明と診断,食品の鮮度測定,冷凍貯蔵の鮮度測定など,簡便な測定・解析システムの開発が極めて広範にわたる分野で期待されている。