RGMS

Research Group of Molecular complex System

研究概要

複雑系の緩和現象とガラス転移

高分子固体やガラス固体などを含めた複雑液体を取り扱う分野で,現在最も重要な課題のひとつは,様々な複雑液体の示す緩和現象に対してユニヴァーサルな緩和機構を考えることである。広範囲の周波数領域での精度の高い誘電緩和現象の観測から得られた緩和関数を,Kohlroush-Williams-Watts(KWW)関数でフィッティングして,そのパラメータからユニヴァーサルな双極子相関を表すことができる。15桁にもおよぶ周波数域での緩和現象を観測できる研究グループは国際的にもそれほど多くはなく,(5)広帯域誘電分光システムの開発で述べる測定システムの再構築から考えるべき重要な計画である。

この分野でさらに問題とされているのはβ緩和過程のメカニズムである。これは従来の高分子物質で観測されてきたβ緩和過程(側鎖緩和)ではなく,その物質の化学構造にはよらず,α緩和過程(主分散)を示すあらゆる複雑系物質で観測される緩和過程のことで,物質には依らないユニヴァーサルな緩和メカニズムが存在するのではないかと考えられるようになってきている。従って解析についても上記のユニヴァーサリティと関連させて行われている。この取り扱いによって,従来から申請者らが関与してきたガラス転移の問題もまた同時に検討し直されることになるだろう。

KWW関数のユニヴァーサリティはスピン系の相関関数の減衰として,コンピュータ・シミュレーションによって再現できると思われる。双極子相関がどのように表現されるときにKWW関数が出現するのか,それが実際の分子複雑系のどのような分子間相互作用に対応しているのか,ガラス転移に伴ってその相互作用がどのように変化するのか,などの問題に本質的な解釈が与えられることが期待される。