Liquid Crystal(液晶)
液晶の動的微細構造

  液晶は、液体相と固体(結晶)相の中間にあたる相、すなわち液晶相を有する物質である。液晶分子は剛直で長い分子であるため、液晶相では固体や液体と違った、特異な分子配列をとる。この配列による異方性によって液晶は偏光性を示す。現在、液晶分子が有している電気双極子モーメントや磁気双極子モーメントを利用した分子配列の制御が可能になり、電化製品等への応用が可能になった。これだけ工業的に利用されるようになった液晶であるが、その物性の分子論的理解はされていないことも多い。これは液晶の物性が分子構造だけでなく、分子配列にも支配されているためである。
  一般的な有極性液体は分子間に働く水素結合などの電気的な相互作用によって、ある種の構造を形成している。一方、ベンゼンは無極性液体であることが知られている。有極性液体にベンゼンを溶かすと、ベンゼンは有極性液体分子間に入り込み、有極性分子間に働く相互作用は弱まる。

  n-オクチル・シアノビフェニール(8CB)は、典型的な液晶である。本研究では、8CBのベンゼン溶液のTDR測定を広い濃度範囲で行い、液晶分子の分子間相互作用をその緩和パラメータからの考察を行った。また示差走査型熱量計(DSC)による濃厚溶液系の測定から配列秩序形成過程と動的挙動の関連を調べた。

  実験の結果から、分子間相互作用や分子配列秩序の様子が4ステージに分類できることが解った。
・0-50% 液晶分子の分子間相互作用として均一で一様な粘性液体の媒質とみなすことができる濃度領域

・50-80% 液晶分子同士の衝突が動的挙動に反映される領域

・80-93% 液晶分子が反平行ダイマーを形成する領域

・93-100% 液晶相が形成される領域

液晶に関する実験結果は、以下の論文で発表している。

T. K. Bose, B. Campbell, S. Yagihara, and J. Thoen,
"Dielectric Relaxation of Alkylcyanobiphenyl Liquid Crystals Using Time Domain Spectroscopy", Phys. Rev. A, 36(12), 5767-5773 (1987).

八木原 晋, 大橋 仁, 三吉 淳二, 佐藤 洋一, 飯田 昌盛,
"液晶の動的微細構造", 東海大学短期大学部紀要, 26, 25-32 (1992).

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