Biomembrane(生体膜)


  私達の体は百兆近い数の細胞からできていて、その一つ一つの細胞表面には 外界から自己を区別する形質膜がある。 さらに細胞内には、形質膜のような膜 により隔てられた核や小胞体のようなオルガネラ(細胞内小器官)が存在してい る。 この形質膜やオルガネラ膜を総称して生体膜と呼び、そのいずれもが主と してタンパク質と脂質が非共有結合によって集合したものである。 生体膜は、 細胞外からの情報を細胞内に伝えることなどや、選択的透過性を有する障壁 (barrier)として、生命体にとって重要な働きを担っている。

  一方、生体中には多くの水が含まれており、生体系でのいろいろな機能を発現 する上で重要な役割を果たしている。タンパク質やDNAの水溶液の研究では、水に 関して様々な報告がなされている。 しかし、最も重要な生体物質のひとつである 脂質分子(脂質膜)の周りにも多くの水が存在し、なんらかの役割を果たしてい ると思われるが、はっきりとした見解は報告されていない。

  TDR法による誘電緩和測定は、1MHz〜10GHzまでの広い周波数領域の測定が可 能である。球状タンパク質水溶液や高分子水溶液のTDR測定では、分子運動と分 子内運動、分子の構造の一部分を担う結合水などの水の構造変化、高分子の分 子運動、高分子による自由水の緩和分布の変化が確認されている。TDR法による 誘電緩和測定によって、いままでの手法では直接観測できなかった膜(分子)の まわりの水構造とその変化が明らかにできることが期待できる。 また膜の分 子運動が確認されれば、分子運動と水の構造変化が同時に観測されることにな り、膜の分子レベルでの物性とその意味が明らかになることが期待できる。更 に、脂質による運動と水構造の違いなどを観測することにより、DDS(Drug Delivery System)への応用に向けての基本物性になっていくことや、タンパ ク質や糖を加えて測定することにより、実際の生体膜の理解につながることが 期待できる。

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