Computer Simulation(コンピュータ・シミュレーション)
双極子の配向シミュレーション

  外的条件(温度、応力、電場など)を一定にした系は、十分長い時間放置すると熱平衡状態になる。さらに外的条件を別の状態にした場合、系は新しい外的条件で記述された熱平衡状態に有限の速度で向かう。これは新しい外的条件に従って状態エネルギーが変化し、より安定な状態に遷移するためである。この過程は緩和現象と呼ばれる。

  誘電体に外部電場を加えると、双極子は電場の方向に配向し、誘電体表面には分極が現れる。理想的な誘電体での分極の時間変化は、指数関数的になることが導かれている。しかし様々な液体や高分子等の非晶性物質の分極では、引き延ばされた指数関数 (Kohlrausch function)が観測される。これは双極子間の相互作用によってもたらされると考えられている。

  本研究では、様々な状態エネルギーを与えた双極子の配向シミュレーションを行い、得られた分極の時間変化を実際の結果と比較した。

  配向シミュレーションでは、各双極子を上向きと下向きの2状態モデルとした。まず双極子10000個を1次元上に等間隔に配置し、向きをランダムに設定した。この時2状態は活性化エネルギー△Hによって隔てられており、各双極子がこれを越えるだけの熱エネルギーを得たときに遷移するものとした。双極子相関には様々なものが考えられるが、今回クーロンポテンシャルによるエネルギーを、部分結晶構造であるクラスター構造を仮定して、イジングモデルを用いて与えた。次に外部電場を与えることによってそれぞれの状態エネルギーを変化させ、配向を開始させる。十分に配向したところで外部電場を取り除き、電場方向を向いている双極子の数の時間変化を観測した。その結果、Kohlraush型の分極が得られた。

得られた結果に、次の論文に報告を行った。

S. Yagihara, M. Yamada, and N. Shinyashiki "Computer Simulation of Spin Dynamics" Rept. Prog. Polym. Phys. Jpn.., 41, 475-478(1998).

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