2.希薄溶液から固体までの高分子鎖ダイナミックスの研究(1974-1978)−東海大学真下研究室の発足

 東海大学理学部物理学科に講師の職を得た翌年,真下研究室の卒研生の第1期生 として3名が集まった。翌2期生から徐々に大学院進学者を輩出していった。研究 活動では依然として早稲田大学の千葉研究室との共同研究で高分子希薄溶液の誘 電緩和測定を続け,同時にGeneral Radio Companyの変成器ブリッジを真下研究室 に持ち込んで卒研生,さらに大学院生による測定が始まった。
(1) 希薄溶液中の共重合高分子鎖のダイナミックス [8, 27, 28, 30]
 モル分率の異なる共重合体を合成して,溶液中でのセグメンタル運動に伴う立体障害の度合いを変えて誘電緩和測定を千葉研究室で行い,緩和パラメータのモル分率依存性から繰り返し単位の側鎖の立体障害が相互作用におよぼす影響を議論した。
用いた共重合体はpoly[methyl methacrylate(MMA), styrene], poly(MMA, a-methylstyrene), poly(MMA, p-chlorostyrene)である。 ここでmethyl methacrylateはC型高分子の繰り返し単位,styrene誘導体はB型高分子でさらに双極子モーメントの値が大きく異なる繰り返し単位であり,それらの大きく異なる誘電的性質を利用してchain dynamicsについての知見を得ている。
(2) 高分子溶液中の高分子鎖ダイナミックスの濃度依存性 [15, 16, 20]
 希薄溶液から濃厚溶液,さらにピュアな高分子固体までの広い濃度範囲にかけて,free volumeの変化をKramers理論の摩擦係数に取り入れることで,その誘電緩和測定から求められた緩和時間の濃度依存性を解釈した。ここでは高分子溶液の誘電緩和の測定データとして,従来の早稲田大学での測定データだけではなく,文献値も多用し,一般的な議論を展開した。
(3) 高分子固体のダイナミックス [17, 18, 21, 24]
 (1)と同様に共重合体の側鎖緩和と主分散を変成器ブリッジで測定した。東海大学で測定した最初のデータである。用いた共重合体は上記2(1)と同様である。側鎖緩和については,体積の大きなstyrene誘導体側鎖が小さなMMA側鎖のfree volumeを増大させる効果をKramers理論で記述した。またガラス転移域での緩和についても,Kramers理論による緩和時間の定量的解釈を行った。これ以降高分子固体の測定を続けていくことになった。
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[RGMS] [Department of Physics]
(C)Research Group of Molecular complex System


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[Department of Physics] [Tokai Univ. Computer Center]

Mikio Oyama
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