研究紹介 山口真研究室

理学部物理学科 山口真研究室

私たちの身の回りにある様々な物質は、電子や原子といった無数の粒子の集団によって構成されています。そして、これらの粒子の1つ1つの性質は単純であったとしても、無数の粒子が集まって集団となると、個別の粒子の振る舞いからは全く予想もしなかった性質が発現することが多々あります。

たとえば、水はたくさんのH2O分子の集団と捉えることができますが、温度が0度以下では固体(氷)であるのに対し、0度~100度の間では液体(水)として振る舞い、100度以上では気体(水蒸気)として存在します。このような性質の劇的な変化(相転移と呼ばれる)は、個別のH2O分子の性質だけから理解することはできません。この現象を根本から理解するには、無数のH2O分子がお互いに相互作用しつつ、集団としてどのように振る舞うのかという視点に立って考える必要性が生じます。

現在、水分子に限らず、このような粒子の集団としての振る舞いを系統的に理解する方法論として、熱力学・統計力学という学問分野が確立しています。この学問分野は、物質の性質を理論的に説明する上で、これまで多くの成功を収めてきました。高校でも習う(理想)気体の性質はもちろんのこと、金属や半導体、磁石の性質から超伝導に至るまで熱力学・統計力学を用いて解析できる現象は広範にわたります。特に超伝導現象は、金属など特定の物質の温度を徐々に下げていくとある温度で突然電気抵抗がゼロとなる驚くべき現象ですが、この現象も熱力学・統計力学の視点から相転移として捉えることができます。

このように熱力学・統計力学は極めて強力な理論体系となっているのですが、実は大きな問題が1つあります。それは、これらの方法論が「物質は熱平衡状態(長時間経過後に物質が自然に行き着く状態)にあること」を大前提としているという点です。したがって、この大前提から大きく外れた「非平衡状態」にある物質の性質については、まだまだ分かっていないことが数多く残っています。

このため私の研究室では、物質を構成している粒子の微視的な物理法則(量子力学)を出発点として、非平衡状態にある様々な物質の性質を明らかにする理論(物性理論)の研究を行っています。具体的には、非平衡性が本質的に重要となる半導体光物性理論(半導体レーザーなど)や、非平衡統計力学の一般論の開拓に興味をもって取り組んでいます。大学入学時点では、物性理論という分野そのものを知らない学生も多いように思うのですが、実際に取り組んでみるとその面白さに魅了される学生は多いと思います。たくさん勉強して、私たちと一緒に研究を進めてみませんか?