RGMS

Research Group of Molecular complex System

研究内容

ゲル(Gel)

ゲルとは、高分子鎖同士が物理的もしくは化学的に結合することでネットワーク構造を形成し、 溶媒を吸収して一定の容積に膨潤したものである。一般に「あらゆる溶媒に不溶で、三次元網 目構造を持つ高分子及びその膨潤体」と定義される。

我々の身近に存在するゲルには、ゼリー、こんにゃく、寒天などの植物や吸水性合成高分子ゲルがある。また近年、衝撃吸収剤 としてスポーツシューズの底に用いられるシリコンオイルを溶媒としたゲルなどがある。 ゲルには日常生活に密着した物資であるにもかかわらず、その物性は未だ不明な点が多い。 しかしゲルの応用面での期待は大きく、生体内にも多く存在していることから、自然に優しい新素材として注目を浴びている。

溶媒濃度を変えていくと、高分子ゲルの体積はある濃度で急激に変化する。この現象は体積相転移と呼ばれ、盛んに研究が行われている。 特にアセトンと水の組成を変えたアセトン水溶液中でのポリアクリルアミドゲルの体積変化は十分に研究がなされている。しかし高分子ゲルの 体積変化に伴うゲル中のアセトン-水混合溶媒の分子ダイナミクスについての研究は十分行われていない。

そこで我々はTDR法を用いて、ポリアクリルアミドゲルと溶媒の誘電緩和測定を行い、ゲルの体積相転移によって 影響を受けたアセトン-水混合溶媒の分子ダイナミクスについて研究を行った。その結果、体積が大きく変化する低アセトン濃度領域では、ゲル中のアセトン-水混合溶媒はゲルの影響をほとんど受けない。 これに対し、ゲルが収縮し体積がほとんど変化しない高アセトン濃度領域では、高分子濃度がほとんど変化してい ないにもかかわらず、緩和時間と緩和時間分布が大きく変化し、ゲルの凝集状態がアセトン-水混合溶媒に大きく 影響を与えていることがわかった。